二酸化炭素濃度の改善で脳を元気に
オフィスでデスクワークをしているときや、会議室で同僚たちと会議をしているときに集中力が欠けたり猛烈な眠気に襲われることはありませんか。それは昨日遅くまでネットを見ていて睡眠不足だからというだけでなく、実は室内の高い二酸化炭素濃度が原因かもしれません。
人は呼吸をすることで酸素を吸い、二酸化炭素を大気中に吐き出します。そのため密閉された空間で人が多く働くオフィスでは、時間が経つにつれ必然的に二酸化炭素濃度は上昇していきます。そして、二酸化炭素濃度の高い環境は、脳の活動を低下させてしまうのです。
二酸化炭素濃度が仕事に与える影響
二酸化炭素濃度が高くなることで、人体にさまざまな影響があることが複数の研究結果で証明されています。具体的には室内の二酸化炭素濃度があがると、人は思考レベルや集中力が低下し、眠気、やる気の減退、肩こりや頭痛などを発症します。
これを日常の業務のなかで考えた場合、オフィス内の二酸化炭素濃度の上昇により、まずそこで働いている人たちの思考力が落ち、その結果、思考力が落ちれば仕事のスピードや質が落ちてくることが予想されます。眠気が起これば仕事上のミスも増えるでしょう。また肩こりや頭痛を感じている時に良いアイデアが浮かんでくるとは思えません。
このように二酸化炭素濃度の上昇による人体への悪影響が仕事のパフォーマンスをも低下させてしまうのです。
二酸化炭素濃度を低くするためにできること
それでは、二酸化炭素濃度を低くするにはどうすればいいのでしょうか。実は非常に単純な方法ですが、換気が一番効果的な方法です。外気の平均的な二酸化炭素濃度は400ppm(1ppmは0.0001%)ですので、オフィス内の1000ppm程度の二酸化炭素濃度の空気を循環させ、外の空気とある程度入れ替わるようにするだけでオフィス内の二酸化炭素濃度は低下します。
密閉された空間では人間の呼気により二酸化炭素は増えていきますので、人が多いオフィスの二酸化炭素濃度は時には3000ppmを超える水準まで上昇することがあります。換気扇や窓の開閉、サーキュレーターの活用などにより空気の入れ替えをしっかり行うことが、二酸化炭素濃度を維持管理するもっとも大切なポイントです。
二酸化炭素濃度と意思決定
ローレンス・バークレー国立研究所とニューヨーク州立大学の共同研究では二酸化炭素濃度がそれぞれ600ppm、1000ppm、2500ppmの環境で「情報検索」、「情報活用」、「基本的な戦略」など9種類の意思決定テストを行ったところ1000ppmで6種類に有意な低下が見られ、2500ppmで7種類に大きな低下が見られたとの結果が出ました。
またハーバード大学院助教授などによる共同研究では同様に二酸化炭素濃度や換気率、揮発性有機化合物などそれぞれ条件の異なる環境下でのテストを行いました。その結果、より換気率が高く、揮発性有機化合物や二酸化炭素濃度が低い環境下で戦略的意思決定などが高い数値となりました。
つまり特に高度な知識レベルを要求される仕事においては、二酸化炭素濃度を最適な環境に近づけることでより高い成果を期待ができるということが実証されているのです。
最適な二酸化炭素濃度
日本ではオフィス内の二酸化炭素濃度については、建築物環境衛生管理基準に詳しく定められています。空気の浄化、温度、湿度、流量の調節をするための空気調和設備を用意し、常に居室内の空気環境を維持管理することが定められているのです。
そしてオフィス内の二酸化炭素濃度については、1000ppm以下に抑えるという明確な基準が示されています。様々な研究結果を見ると600ppm程度の二酸化炭素濃度が理想に近いと思われますが、最低でも1000ppmを上回らないようにする努力が必要とされています。
詳細な二酸化炭素濃度を測る機器もあり、それをモニタリングしながら様々な対策をとることもできますが、それにはやはり手間と時間もかかりますのでまずは手始めに換気を良くすることなどからはじめてみましょう。
定期的な窓の開け閉めや換気扇を常時使用すること、サーキュレーターの活用などが室内の換気を促すためにすぐに始められる改善方法です。
自宅や外出先では元気なのにオフィスで常に眠気や疲労を感じてしまうという場合は、オフィスの二酸化炭素濃度をぜひ一度調べてみることをおすすめします。